星屑
慶次は刺すような痛みに目が覚め、
下半身を押さえつける黒い影に驚いて飛び起きた
「や!やめろッ!」
「動くな…手当てをしているだけだ」
慶次は落ち着いた渋みのある声に動きを止めた
「あんた…」
「片倉小十郎だ」
「あ…ああ、右目さんか…」
政宗でないと分かると、安堵からドッと疲労が襲い掛かり
慶次は抵抗する気力もなく小十郎に身をまかせた
グッタリと布団に伏せる慶次に小十郎は淡々と手当てを施す
政宗に散々嬲られた孔に指を差し入れ
中の精液を掻き出すと、ぬるま湯で濡らした手拭で下肢を拭き
赤く傷ついた後孔に軟膏を塗りたくった
「う…っ…」
慶次が低く呻くと、処理を終えた小十郎が呟いた
「政宗様も無理をなさる…」
小十郎の同情するような口調を聞いて慶次は顔を上げた
「なぁ小十郎さん…頼む。此処から出してくれよ」
「……それはできん」
短く答えると小十郎は湯の入った桶を持って立ち上がり
座敷牢を出て行った
小十郎がいなくなると辺りはシンっと静まり返り
物音一つしない静寂に包まれる
慶次は小十郎が乱雑にかけた掛け布団を引き寄せ、
再び意識を失うように眠りに落ちた
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ふた月も過ぎたある夜、小十郎が廊下を歩いていると
後ろから成実に呼び止められた
「小十郎!梵のやつ見なかったか?!」
「…急用か?」
「急用かじゃねーよ!先日の大雨で土嚢が崩れた修繕の件どうなってるんだ?
だいぶ前から陳情書が上がってるんだぞ!」
「…そうだったな…政宗様にお伺いしておく」
成実は痺れを切らし声を荒げた
「悠長なこと言ってる場合か!俺が直接聞いてくる!どこにいるんだっ」
「……」
言葉に詰まる小十郎を見て、不愉快そうに舌打ちをする
「座敷牢か?」
「…誰も近づけるなと言われている」
「狐じゃないだろうな?」
成実は政宗によく似た端整な顔に冷笑を浮かべた
「昔、唐の王にとり憑き国を滅ぼした美女が九つの尾をもつ狐だったらしい」
「…」
「ソイツを囲ってからおかしいぜ?!内政はほったらかし。
昼夜問わず座敷牢に入り浸って…お陰で家臣の士気も下がりっぱなしだ」
「わかっている。少しばかり小奇麗な顔をしているから遊びに夢中なだけだ
…じきに飽きる」
成実はフンっと鼻先で笑い、肩をすくめる
「だと、いいけどな」
そう言って踵を返すと急ぎ足で立ち去った
成実の背を見送り、小十郎は思案したあと座敷牢へ足を向けた
余計な詮索は無用と突っぱねたつもりだが、勘のいい成実のこと
思惑を見通したような冷ややかな目を思い出し小十郎は眉根を寄せる
口ではああ言ったが、
幼い頃より傍で仕えていた小十郎も戸惑うほどに
政宗の慶次に対する執着は強く
飽きるどころか増してゆく情念と共に責めも酷くなり、
慶次の身を案じてしまう程だった
屋敷の奥
重い扉を開き、緩やかな石畳を通ると
慶次の呻き声が響いてきた
「政宗様…」
政宗は折りたたんだ布団に腰掛け、床に転がる慶次を眺めていた
「まっ!政宗様っ」
慶次の様子を見て小十郎は慌てて駆け寄る
手足を縛られ、目隠しと猿轡で拘束された慶次は玉のような汗を浮かべ
細かく痙攣を起こしていた
後孔に南蛮渡来の男根の張り型が差し込まれ、怒張した慶次の摩羅の根元は
きつく荒縄で縛られている
小十郎が慶次を抱きかかえると、燃えるように熱く
呼吸を楽にしてやろうと猿轡を外してやった
「おい、小十郎…勝手に何をしやがる」
「政宗様!何故このような仕打ちを!?死んでしまいますぞ!」
「HA!…手に入れた媚薬の効果を知りたくてな」
政宗は美貌を歪めて笑った
「多めに薬を盛っただけた」
「ま…政宗…様」
常軌を逸した政宗の目に小十郎は震撼した
慶次は精を放つことが出来ない苦しさで、ただ言葉にならない
喘ぎを漏らして短い呼吸を繰り返している
「あぁッ…た…助け…ッうあ…ぁっ…」
「慶次っ、しっかりしろ!」
小十郎が声をかけると、慶次は支える腕にすがり付いて身を寄せた
その様が気に入らなかったのか政宗は立ち上がると
慶次の後孔に突き刺さった張型を足で乱暴に踏みつけ、さらに奥へ押し入れた
「うあぁ!!あああッ!」
内壁を抉られるような刺激に慶次は背を仰け反らせ叫んだ
「政宗様ッ!!」
ガクガクと震える慶次の体を抱きこみ、小十郎が政宗を咎めるように見上げる
「An?コイツは人質だぜ?どうしようと俺の勝手だろうがッ」
「政宗様は間違っておられます!」
「小十郎、この俺に意見する気か」
凍るような視線にも怯まず、小十郎は政宗に訴えた
「この者を大事に想うのならば、間違いを起こしてなりませぬ!」
「大事…だと」
「政宗様はこの男を…」
言いかけた小十郎の言葉を政宗の怒声が遮る
「黙れッ!!小十郎てめぇ…」
政宗は慶次の髪を鷲掴み、引っ張り上げた
「ううっ…!」
口に指を突っ込み、上向いた顎を無理やり大きく開かせる
「小十郎、コイツの口に摩羅を突っ込め」
「…っな、何を…っ」
小十郎は政宗の命令に絶句した
「できねぇって言うのか?」
「……!」
従わなければ政宗は苛立ちを慶次に向けるのは明白で
小十郎は躊躇いの後、膝を立て袴の帯を解いた
溢れた唾液が慶次の赤い唇を濡らしている
政宗は慶次の耳元で優しく囁いた
「小十郎の精を飲み干せ…上手く出来たら褒美に縄を解いてやる」
その言葉に慶次は引き寄せられるように、小十郎の下帯をずり下ろし
一物を口に含んだ
柔らかい粘膜で包み込まれ、ゆっくりした動きで舌がねっとりと絡み付いてくる
慶次に負担をかけないように、早く達してしまおうと
目を閉じ陰部に意識を集中しようとした小十郎だったが
その必要など全くないほど、その舌技は遊女も及ばぬ妙技だった
「くっ…慶次」
ビクンと脈打ち、大きく勃起したモノを喉奥深く咥え込まれ
ズルりと舌で裏筋を舐められながら引き抜かれると
強い射精感が陰嚢から亀頭へ突き上げる
「…ッ!」
小十郎が眉根を寄せ、唇を噛むと
政宗は満足そうに笑みを浮かべた
「どうだ、小十郎?ただ口に含むだけだったコイツをここまで仕込んだんだぜ
悪くねぇだろう?」
おもむろに慶次の尻に埋まっていた張型を一気に引き抜くと
政宗は己の怒張した一物を根元まで突き刺した
無為質な張型と違い質量も倍ある凶器のような
熱い摩羅をぶち込まれ、その衝撃に小十郎のモノを口から離して絶叫した
「い゛ッ!!ぎゃぁあああッ!!」
政宗は慶次の背中に圧し掛かり、ガっと長い髪を引っ張った
「誰が止めていいと言った?咥えろ」
「うッ!ううッ…ゆ、許してッ…許してぇ…ッ」
細かく震えながら泣きじゃくる慶次に政宗は冷たく言い放つ
「俺の命令が聞こえないのか?…咥えろ」
「ふっ…!うッ…ひぅ…」
朦朧とした意識のまま、慶次は再び小十郎の一物を口に含み
奉仕を始める
政宗は慶次の臀部を鷲づかみ大きく左右に押し開くと
ズルっと半分程引き抜きズンっと体重を乗せ、
中の前立腺を擦りあげる様に突き入れた
媚薬で気が狂いそうな程の快感に堪えていた慶次は
政宗の直腸を掻き回すような激しい性交に
根元が縛られているにもかかわらず、亀頭から射精のような勢いで先走りを垂らし
しがみつく小十郎の腰に爪を立てた
「〜ーーッ!!!」
声を出せない苦しさで、口内を犯す小十郎のモノを強く吸い上げる
「…ッ!慶…次ッ」
政宗が後ろから慶次を突き上げる度に、一層深く咥え込む形になり
小十郎は絞り取られるような口内の吸い付きに
堪らず喉奥に大量の精液を放った
「くッ…!」
「んんッ!んぐぅッーー!!」
慶次は小十郎の精を一滴も零さず、ゴクゴクと飲み下す
「慶次…っ」
出し終えて、小十郎が腰を引くと
己の精で口元を汚した慶次の濡れた眼と視線が合い
その淫猥さに思わずゴクリと生唾を飲んだ
「よしよし…いい子だ、慶次」
政宗は優しく慶次の頭を撫でてやり、痛々しい程勃起した摩羅の根元を縛る
荒縄を解いてやる
「ひィッ!あ゛ッ!あああぁッ!!」
塞き止められていた精が一気に開放され、勢いよくビュルビュルっと白濁した
精液をあたりに撒き散らした
「あ、あ゛あ゛ッ!!」
「はははッ!!気持ちいいか?慶次ッ!!」
慶次の体を貪るように狭い後孔に摩羅を突きいれながら叫んだ
「俺だけが、お前の中には俺だけがいればいいッ!」
「ま、政…ッ…宗ぇッ!!」
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拷問のような情交が終わり、政宗が座敷牢を出て私室へ向かう途中
小十郎は主を引き留めた
「政宗様」
「……なんだ」
強い夜風が木々を揺らし、月明かりが煌々と廊下を照らしている
「前田慶次を、牢から出す許しを」
「…Ha!何を馬鹿げたこと言ってやがる」
「政宗様が愛情を持って接すれば、閉じ込めておかずとも
逃げ出しはしないはず!」
政宗は背を向けたまま、鼻先で笑った
「愛だと?お前はさっきから何を…」
小十郎は激昂するように声を上げた
「失ってからでは遅いのです!」
その怒気に政宗は驚いて小十郎を見た
「体力の限界がきてる。政宗様もお分かりのはず!
このままでは政宗様は慶次を責め殺してしまう!」
「……俺は」
「既に高熱と体への負担で心拍が弱まっております、
すぐに薬師を呼ばなくては危険な状態です」
「……」
口をつぐみ、視線を落とす政宗の目には動揺が広がっていた
「政宗様の見たいものはあの者の泣き叫ぶ顔なのですか?!」
「……No…俺は、アイツの…」
一層強い風が吹き、木々がざわめいた
「アイツの…笑う顔が見てぇ…」
苦しそうに胸元を掻き毟るように拳を握る政宗を見て
小十郎は小さく息を吐いた
「政宗様…ならば、政宗様が笑いかけることです…心を開いてもらえるよう」
「…受け入れられなかったら…どうする。俺から去っていったら…」
「何もしないうちから怖気ずくのですか?貴方様らしくもない」
小十郎が挑発するような口調で言うと、政宗はハッとしたように隻眼を見開いた
「…そう…だな。俺としたことがcoolじゃねぇことを…小十郎!」
「はッ」
「早く薬師を呼べッ!慶次を牢から出せ!」
「御意」
小十郎が踵を返し、座敷牢へ戻ろうとしたその時
正門の方に赤々と火の手が上がっているのが見えた
それは強風に煽られ、瞬く間に城へ燃え移ろうとしている
「ぼッ!梵ッ!!大変だッ敵襲だ!!」
成実が自分の槍と政宗の六爪を持って階上から駆け降りてきた
「夜襲かッ!どこの軍勢だッ」
「まだわからねぇ!それより火が燃え移るぞッ!早く逃げろッ梵!」
火の手に気付き飛び出してきた兵に指示を出しながら
小十郎が叫ぶ
「政宗様!ここは任せて、早くお逃げください!」
「だ…駄目だ!慶次、慶次をッ!」
座敷牢へ向かおうとする政宗を小十郎は押さえつけた
風向きが悪く、暗闇が一層赤く塗り替えられ
城中の混乱は益々広がってゆく
「成実!お前は政宗様を連れて逃げろ!俺は慶次を連れ出してから行く!」
「分かった!梵ッ、来い!」
小十郎の後を追って座敷牢へ駆け出そうとする政宗を
成実が無理やり引きずるように連れ出す
「慶次ッ!慶次ーッ!!」
政宗の声は迫る黒煙に呑み込まれた
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