山吹
ケンちゃんと、オレとユキは幼馴染で、子供の頃からよく三人で遊んだ
いつまでも三人で仲良くいられたら…そんな淡い夢をもっていたが
高校生になった頃、それは呆気なく打ち砕かれた
ユキがケンちゃんと付き合ったからだ
それはそうだろうと、どこか心の中で納得する
オレが女だったらやはりケンちゃんに惹かれるだろうと
「オレも…もし女だったらケンちゃんに惚れてたな…」
明の言葉を聞いて斉藤ケンは睨み返した
「は?」
聞き返す短い声は不機嫌で、明は内心しまったと思った
自分の何気ない言動がケンの神経を逆撫ですることがある
フォローのつもりで慌てて言い分けをした
「あ、えっと…だって、男らしいし、カッコいいだろ?」
「オレもって、何だ」
ケンの変わらない冷めた口調に明は俯いてしまった
そんな明を一瞥し、さっき狩ったばかりの獲物をドサリと置くと
ケンは懐からタバコを取り出し一服し始めた
仕方なく明もその横に座る
この島では自給自足だ
敵の襲撃を受ける度に生活の拠点を変更するので
農作物ばかりに頼るわけにもいかず、
小動物の狩りが食料調達の重要な仕事のひとつだった
普段明達は武術の訓練をしているが最近は長雨が続き、久しぶりに晴れた今日
組織の大部分の男は狩りをすることになったのだ
二組に分かれて山に入り、夕方までに戻るのだが
明とケンの二人はさっそく弓矢で獲物を捕らえ、一旦麓に下りようとしていたところだった
明は自分より幾分背の高いケンを見て思った
小さいころから、明はケンに守られてきた
強くなった今でもケンが仲間の兄貴分なのに変わりはなく
今までそうだったように、これからもずっとそうであって欲しいと願う
それ程、明はケンに絶大な信頼を寄せていた
「で?」
突然思考を遮られ、明は間の抜けた声をあげる
「え?…何が」
ケンは紫煙をゆっくり吐き出しながら、遠くの景色を見ていた
明はさっきの会話の続きを思い出す
「…ユキも…オレも…もしオレが女だったらユキみたいにケンちゃんの方…」
最後までは言えなかった
明は自分に自信がないせいで、卑屈な物言いをすることがあり
ケンはそれを酷く嫌っていた
怒鳴られると思い身構えていたが、ケンはいつまでも視線を明に向けず
何か物思いにふけっている様子だった
明はその精悍な男らしい横顔を横目で見る
父親が何度も変わったりと複雑な家庭事情のせいか
ケンは仲間の中でも精神的に早老で大人だった
ケンは短くなったタバコを傍の小石ですり潰すと
ふと自嘲した
「お前、ユキがオレのこと、マジで好きだと思ってんのか」
「…え」
ケンの突然の言葉に明は絶句する
「ユキが好きなのはお前だよ、明」
「……」
そんなわけない、と反論の言葉を言う以前に
明はケンの真意がわからず、ただ呆然と見つめた
明の様子にケンはニヤリと笑い、目を伏せた
「お前がいつまでもウジウジして告んねーから、ユキも諦めてオレと付き合ってんの」
そう言って、大きく息を吐く
ケンは草地に寝転がると、久しぶりの青空を見上げた
「…そんなこと…ないよ」
やっと、それだけいうと、明もケンにならって横に転がる
「明、ユキが好きか?」
「…」
明はケンの問いに即答できなかった
いつもの強気な雰囲気がなく、ケンの声が深刻な声音だった
しかしケンは明の沈黙を勝手に肯定と受けとった
「じゃあ…もういいか…、明、ユキと幸せになれよ」
「な…何んだよ、ソレ。ケンちゃん、さっきから何言ってんだよ」
批判するように強い視線でケンを見ると、ケンは困ったよう眉根を寄せる
「ホント、お前が女だったらなぁ…」
明は話せば話すほど深まる溝に苛立った
「女だったら何なんだ」
明の投げやりな言葉にケンの虚ろだった眼に鋭い光が宿る
「女だったら…」
そういうと、ケンは上半身を起こし、明の上に圧し掛かる
両手で明の手首を掴むと頭上で、ひとつにまとめ上げた
体を拘束され明の思考は完全に停止した
見上げる友の顔が雄の顔になっている
欲情した眼で見下ろされ、明は息をのんだ
「ケ…ン…ちゃ…」
「嫌なら振りほどけよ明、簡単だろ?今のお前なら」
明はケンを突き飛ばせなかった
手首を押さえるケンの手は全く力が入ってなく、ただ添えているような程度で
本気で何か乱暴をしようとは思えなかったからだ
ケンの真意が知りたくて明は真っ直ぐ見上げた
抵抗しない明の視線を受け止め
ケンは一瞬悲しそうに眼を細めた
「お前…本当に残酷だな」
ケンの後ろにまとめた前髪がサラっと明の顔にかかる
ゆっくり整った顔が下りてきて、唇が重なった
唇の感触を確認するように、優しく啄ばむ
チュっと吸い上げる小さな音に
明の胸がトクンと高鳴った
2,3度角度を変え、明を愛しむような口付けをしたあと
静かにケンの唇が離れてゆく
その気配に明は言いようのない不安を感じた
このまま縁が切れてしまうような『終わり』を感じる
明は離れる唇を追うように自ら唇を押し付けた
「…あき…ら」
ケンは明の行動に驚きながらも、拘束していた手を離しその頬を包んだ
明は再び重ねられる唇に安堵感を覚え、薄く口を開いて深い口付けを求めた
顎をクっと下へ引かれ、自然に口が開く
ケンの舌がヌルっと口内に進入し、舌先が明の舌を誘うように触れた
生暖かい粘膜のぬめった感触に、ジワリと性的な興奮が沸き起こる
明は欲情に戸惑いながらも必死にケンの舌に自分の舌を絡めた
口内や歯茎を舌先でなぞられ、キュッと舌を吸われる
溢れる唾液がクチュクチュと水音を立て、飲み込めなかった分が口の端から垂れ流れる
ケンの巧みな舌使いに明はいつの間にか背中に腕を回し
しがみ付く様に爪を立てていた
ケンの空いた手が明の股間を撫でる
ズボンの上からもわかるくらい明の性器は反応していた
ケンはゆっくり手のひらでソレを上下に擦る
「…んっ!…あぁっ…」
深い口付けの浮かされるような甘い快感に
下半身への刺激が加わり
明は堪らず掠れた喘ぎ声を上げた
「…明ぁ…」
ケンは欲情した熱い眼で明を見下ろす
「ケン…ちゃん…オレ」
明は短い呼吸をしながら、言葉をつなぐ
「オレ…女の代わりは…ヤダ…」
辛そうに涙の滲む目を閉じた
「明」
頬を伝い落ちる涙をケンは舌先で掬って舐めた
そのまま、震える瞼へ口付けを落とす
ちゅ、ちゅっと優しく唇で触れる程度のキスに
明はそっと目を開けた
「ケンちゃん…?」
「女の代わりになんかするわきゃねーだろ」
ケンは明の股間を擦っていた手を止める
「オレはお前が思ってるような男じゃねぇよ…明」
話しながらもケンは明のベルトを器用に外してゆく
「ちょッ…ケンちゃんっ!」
「お前らが両思いなの解ってたからよ…ちょっと意地悪?みてーな…」
明の制止を無視して、ケンはズボンと下着を一気に太ももまでズリ下ろした
「っあ!」
露出した性器が外気に晒され、明はフルっと体を震わせた
ケンは小さく微笑んで、勃ち上がっているペニスを掴む
「ひッぁ…あっ」
「オレとユキが付き合ったらお前、少しは嫉妬するかなぁってよ」
「ケン、ちゃ…っ」
無骨な大きい手の平で包み、ゆっくり上下に動かす
「少しはオレを…」
ケンは言葉を切って体を下にズラすと、唇を舌潤ませ明の性器を口に含んだ
明はケンの信じられない行動に慌て、止めさせようとその頭に手を伸ばした瞬間
ドクンと熱の塊のような快感が、性器から下っ腹に突きつける
目が一瞬眩むほどの刺激に、内腿がビクっと引きつった
「うあッ!!あぁ…あ、あっ!」
ヌルヌルした口内でペニスを柔らかく包まれたかと思うと
ギュッと絞られるように吸い上げられる
「ひィっ!」
経験したことのない強い快感に、引きつった悲鳴を上げた
ケンは口の中で硬さを増す明の性器を丁寧に愛撫した
一番敏感な先端に舌を這わせると尿道から先走りが次々に溢れ出てくる
その穴に尖らせた舌先をグリグリと差し込むと
明が一際甲高い声で啼いた
「うッ、だッ!ダメ…っ、ケンちゃん!」
ケンの手が、先走りの透明な液と唾液で濡れる陰茎を激しく扱く
明の腰が浮いて、ペニスがビクンっと跳ねた
「や!ヤダっ!やっぁ!あッあああッ!!」
明は突き上げる射精感に堪えきれず、ケンの口内に精を放った
「んッ!あぁ…ッ!」
びゅくびゅくと吐き出される精液をケンは残らず飲み下した
一滴も残さないように、最後に先端をギュ〜っと唇で包み吸い上げる
「ひィっ!あぁんッ!」
強烈な快感に明の唾液の垂れた半開きの口からは
ひっきりなしに鼻にかかった甘ったるい喘ぎ声が漏れた
ケンはゆっくり明の性器から口を離すと
射精の余韻に浸る明を愛おしそうに見つめた
「明…大丈夫か?」
「は、ぁ…んっ…ケ…ケンちゃん…」
明の体を落ち着かせるように、
ケンは優しく明の腰をさすった
呼吸が落ち着いてきた明は、添い寝するように寄り添うケンを見上げて言った
「ケンちゃん、最後までしよう…」
「……」
ケンは目を見開いて、さすっていた手を止めた
「明…お前、何言ってんのかわかってんのか?」
「…たぶん」
明は目を伏せて顔を真っ赤にする
「オレは…ケンちゃんが好きだよ」
そう小さく呟いて、明はケンの股間に手を伸ばした
「あっ、明?!」
ケンは自分の与える快楽に乱れる明を見て、すでに反り返るほど固く勃起させていた
明は手に触れたケンのペニスの大きさに一瞬驚愕しながらも
ドクンと鼓動が激しくなり、触れた手から体全体へ熱が広がるのを覚えた
明の拙い手の動きが、更にケンを興奮させる
「くっ」
ケンは再び明に覆いかぶさると、真顔で見下ろした
「もう、止められねぇからな」
明はコクンと頷く
ケンの乱れた呼吸と熱を含んだ掠れた声にゾクっと背筋に震えが走った
「うッ!!あああぁッ!!」
明は苦しそうに眉根を寄せ、必死に浅い呼吸をしながら細かく体を痙攣させている
「あぁッう…いッ!いだッ…ぁッ!」
唾液で濡らした指で解したとはいえ、外から受け入れたことなど一度もない明の後ろは狭く
ケンのペニスを強く締め付けた
「ッ…明…」
ケンは明のペニスを握ると指の腹で、カリ部分をグリグリと擦り上げた
「んっ!…ぁ…」
後ろに集中していた明の意識が、扱かれるペニスの方に分散し、活約筋が緩む
その一瞬に、ケンは半分しか収まっていなかったペニスを一気に奥へ押し入れた
ガクンっと揺さぶられ、ズンっと体の最奥へ太い肉棒が捻じ込まれる衝撃に
明は目を見開いた
「ぁッ!ああッ!!ケっ…ケンちゃ…!」
明のペニスを刺激しながら、ケンは苦しそうに冷汗を額に浮かべる明を見つめた
自分のモノを明の狭い腸壁がキュウキュウ締め付け、うねっている
ケンは明と一つになっている実感に胸が熱くなった
「明…」
顔を寄せ、唇を重ねた
ケンの舌に翻弄されるだけだった明も徐々に舌を絡める
異物感はあるものの、下半身の痛みが引くと変わりにジワジワと快感が沸き起こった
それはケンが緩慢にペニスを出し入れする度に強くなる
「ケンちゃ…ぁん…」
名前を呼ぶ声が自分のものとは思えないほどに、甘ったるい
ケンの逞しい雄に犯されることに快楽を覚えた瞬間だった
「ぁ…きら…」
明の真っ黒な潤んだ瞳と
口の端から唾液を垂らす、真っ赤な唇の妖艶さに
ケンはゴクっと喉を鳴らす
「ぁ…ケンちゃん…もっと、」
明の手がケンの背中に伸び、爪を立てた
「もっと欲しい…もっと奥にッ!」
貪欲に自分を求める姿にケンは我を忘れて明の中へ反り勃つペニスと突き上げる
明の体を貪るように激しく腰を叩きつけた
「あ゛あぁッあッ!!」
明が嬌声を上げて背を反らせた
熱い肉棒で狭い穴を掘るようにガンガン打ち込まれ
腸液と先走りで結合部がぐちゅぐちゅ水音を立てた
「ひッぁ!あ、あッ!も、出ッ!」
穴と性器を同時に激しく擦られ、明のペニスがケンの手の中でビクっと脈打つ
既に白い精液が尿道口から滲み出ている
「明ッ!」
キュウっと弾力のある腸壁が蠢動し、ペニスを締め付ける
ケンも限界を感じ、明の腰を高く持ち上げると、卑猥に濡れる穴にひたすら
猛々しい肉棒を差し込んだ
「あああッ!い゛ッ!イク゛ッ!!」
明は腰を跳ね上げ、同時に弧を描くように勢いよく射精した
びゅくびゅく精液を飛ばし、反動で後ろの入り口が一層締まる
ケンはペニスを引き抜いて、明の顔に精液をぶちまけた
「くゥッ!明ァッ!!!」
明の顔や胸、腹に二人の白濁した液が飛び散った
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明はぼんやり流れる雲を目で追う
ケンが持っていた水筒の水で塗らした手ぬぐいで、明の体を拭いている
「なァー、ケンちゃん、あの鳥なんだろ?」
「ああ?知ねぇよカラスだろ」
「えー…でも白いぜ」
屈託ない調子で話しかける明に
ケンは手の動きを止めた
「お前さ、わかってんのか」
深刻な表情で声には苛立ちが含まれている
明は小首を傾げてケンを見上げた
「?ケンちゃん…」
ケンは辛そうに視線を逸らした
「もう、お前のこと諦めようと思ってたのによ」
「……」
「諦められなくなっただろーが…」
「ケンちゃん」
明は上体を起こし、ケンの頬に手を添え
静かに唇を重ねた
「明っ…」
ケンの声を奪うように舌を差し入れ、絡める
明の体温を感じ、ケンも貪るように深く口付けた
角度を変え、何度もその粘膜を味わい、明の唇が名残惜しそうに
唾液の糸を引きながら離れる
「オレは、ケンちゃんが好きだって言っただろ」
「明…」
「この島に来て、ケンちゃんに助けられて…」
明は上陸してすぐ捕らえられ、仲間の命を救うために自ら吸血椅子の犠牲になった時を思い起こしていた
「ううん…違うな、ケンちゃんは小さい頃からオレを守ってくれてた」
内気で気弱だった明をいつも体を張って守っていた
ケンは明の言葉をジッと聴いている
「ケンちゃんとユキが付き合った時、最初は嫉妬した…でも、それ違ったんだよ
みんなのケンちゃんだったのに、ユキだけのものになったのが…オレ…」
明は目を細めた
そして、ふっと口元に笑みを浮かべてケンを真っ直ぐ見つめた
「オレはずっとケンちゃんが好きだったんだと思う」
ケンは信じられないという表情で、そっと腕を伸ばし明を包み込んだ
「…馬ッ鹿…野郎」
「ケンちゃん?」
「オレが…今までずっと、どんな想いでッ…」
ケンはそこまで言うとギュッと唇を噛んだ
胸に熱いものがジワリと広がる
明は抱きしめられる強さに、目を閉じた
「…ケンちゃん、オレ」
「どうした?」
ケンは誰にも見せたことのないような穏やかな表情で明を見る
「オレ、立てないかも…なんか腰が…」
「はァ?」
「だって!ケンちゃんがあんなに激しくするからだろッ」
「バッ!テメーが欲しがるからだろうーがっ!」
そういいながらも、明の腕を掴むと、グイっと引いて背負う
背中におぶると、獲物を括った縄を明につかませ
ケンは里に向けて歩き出した
「ごめん…ケンちゃん」
ケンは自制がきかず、初めて受け入れる明に無理をさせてしまったことを悔いたが
同時に思いもしなかった乱れように頭を悩ませた
「明!テメッ浮気したらブッ殺すからな」
「えっ?!う、浮気?」
するわけないだろっ!と喚く声さえ愛しい
「…そう、か」
不意にケンは呟いた
「浮気する余裕なんかねぇーくらい抱けばいい話だな」
「!!!」
明は言葉を失って真っ赤になったその顔を
ケンの首筋にうずめた