落陽

下知にて突然前田の家督を継ぐことになった時
兄、利久の養子慶次を擁護する家臣との間で対立が起きそうになった

当の自分も慶次の方が文武ともに優れていると認めていたから
このまま家臣同士の対立が深まり家督争いになってしまうのではと懸念したが、
それはあっさり回避された

「利が継ぎな。俺は家に縛られるのは御免だ」
慶次は笑いながら俺の肩をポンポン叩いた

まだ若いのに隠居することになった利久と慶次が前田の家を出て
近くの庵で暮らすことになったので、下知に不満をもっていた家臣も渋々黙ることにしたようだ

慶次は賢い男だったから、病弱な利久の負担を考え争いを避けるため
早々に家を出たのだと思った
利久が自分が至らぬばかりにと慶次に謝っているのを見かけ、胸が痛んだ

利久は元々体が弱く、子がなかったのもあり養子にした慶次を本当の子のように可愛がっていた
「血が繋がっていれば…」自分を責める利久を慶次は困った顔で慰めていた

ある日
京菓子が手に入ったので慶次に食わせてやろうと、庵を訪れた

庭から裏へまわり、縁側へ上がろうとして
体がその場に凍りついた

「慶次」愛おしそうに名を呼ぶ利久の上に
長い髪を解いた慶次が跨って揺れていた

「ぁッ…父上…っ」

白い肌がほんのり桜色に色づき
うっすら汗を浮かべながら淫らに腰を使って
利久の一物を後ろの穴で咥え込んでいる

普段の飄々とした様子からは想像もできない程の色気に釘付けになった

カラカラに渇いた喉に無理やりゴクリと生唾を飲み込み、実兄と甥の情交を見つめた
下腹部に熱を感じ手を袴の横から中に入れると
下帯を突き上げるように己のモノが勃起している

たまらず下帯をずらして、一物をゴシゴシと擦った

「慶次っ…綺麗だ…某の、慶次ッ」
よく似た兄の顔が自分と重なる

桃色の濡れた後孔にジュブジュブと水音を立てながら勃起した一物が激しく出入りする様に
思わず合わせて腰を振った

『うっ…慶次ッ』
陰茎から先走りが溢れ出す

動きに合わせて揺れる、慶次の艶やかな黒髪が
傷ひとつない綺麗な肌が目に焼きつく

「くッ…あ、あぁ…父上ッ、も…もう出っ」
慶次が喘ぎながら、限界をうったえ、しなやかに背が反り返る

突き出された慶次の一物がビクンと震え
先端から白濁した精液が飛び散った

「慶次ッ」
利久も慶次の腰を掴み、その最奥へ精を注ぎ込むのと同時に
利家もまた張り詰めたモノを擦りながら
下帯がぐっしょり濡れるのもかまわず、大量の精液を放った

『けい…じ…』
今まで感じたことのない強い快感にしばし放心していると
不意にこちらを向いた慶次と目が合った

「!」

慶次は小さく目を見開いて

そして
壮絶なほど妖艶な笑みを浮かべた



心の臓に矢が突き刺さるような衝撃を受け
転がるように駆け出した


翌日、いつもの派手ないでたちで慶次が前田家を訪れた
内心の動揺を隠しつつ、普段通りで向かえる

「おう、慶次。今茶を持ってこさせるから待ってろ」
「いや、いいよ。昨日さ」
突然切り出され、息を呑む

「京菓子、ありがとうな」
そう言われ、今の今まで菓子をその場に放り捨ててきたことを思い出した

「あ…いや、たまたま手に入ってな…」
「利」
ニッコリ笑ったその顔が、いつもの慶次の笑顔でホッとした

『いや…違う』

違う

違う

当の慶次が気づかないほどによくできた仮面

あれが…あの血の凍るような笑みを浮かべる慶次が

あれが、本当なのだと気づいて
そっと唇を噛んだ

「どうしたい?神妙な顔して。利には似合わないぜ」

「慶次」

「?」

「某は…某だけはいつでも慶次の味方だからな」

搾り出した言葉に
慶次は幼子のようにきょとんと目を丸くし…笑った

いつまでも笑い続ける慶次をその体が軋むほど強く抱きしめた