真昼


慶次の首を伝う汗がポタリと畳に吸い込まれた

「うっ…くっ…」
「今日は暑いね、慶ちゃん」

そう言いながらも佐助は、汗ひとつ流さずに涼しい顔をしている

「…っあ!さ…佐助さ…っ」
「ふふ…もう欲しそうだね、ココ。ぐちゃぐちゃに濡れてる」
「ヤダ…も、やめ…」
「嫌なら逃げなよ。旦那に言えばいい。佐助に犯されたってさ…」
「っ…そ、そんな事」

佐助は楽しそうに笑い声を上げた
「言えないよね?大好きな旦那に知られたくないよな。
…それとも、俺様の命を心配してくれるの?」

旦那に知れたら八つ裂きじゃすまないもんな、と呟きながら
佐助は慶次の中に差し込んだ指を増やし、グルリとかき回した

「うあ゛ッ!!」

強い刺激に反応するようにビクッと反り返った慶次の陰茎を
佐助が空いてる手で扱いてやると、
唾液に濡れた半開きの口から甘ったるい喘ぎ声が漏れる
「あっ…ぅ…さ、佐助…」
「慶ちゃん」

佐助は物欲しそうにヒクついている後孔の弾力を楽しむように指を蠢かせた
「うっ、ん…っ!」
「ホント、相性いいよね。俺様は好きだけど…慶ちゃんのカラダ」

佐助の手に包まれた陰茎の先から滲み出る淫液が、ポタリと伝い落ちて腹を濡らす
「佐助さん…は…早くっ」
「もうちょっと、我慢できない?」

とうに限界に達しているのを知りながら、佐助は意地悪く問う
ユルユルと首を横に振り、潤んだ目でうったえる慶次の淫猥な表情に
佐助は口元の笑みを深くした

「全く…そんな顔されたら勘違いしたくなっちゃうじゃない」
「お願…佐助さんっ…ゆ、幸が…」

主の名を聞くと佐助は、慶次の中に埋めていた指を一気に引き抜いた
その衝撃で慶次の腰が跳ね上がり、悲鳴に似た甲高い声が上がる

「ひィっ…あぁ!」
「そうだな、そろそろ終わらせないと旦那が稽古から戻ってきちゃうね」

佐助は着物の帯を解いて己の勃ち上がった猛々しい一物を取り出すと、
慶次の両脚を大きく開き
散々嬲ったその孔にピタリと先端をあてがった

「ぁ…ッ」

「さぁ、いい声で啼きなよ、慶ちゃん」

佐助の腰がグンッと前へ突き動くと、
解れた内壁が硬い肉棒をズブズブと呑み込んでいく

「ヒッ!あ…ッああァーッ!!」

目の前が白く弾け飛ぶような快感が腰から頭へ駆け抜け、
慶次は佐助の名を呼びながらその体にしがみついた

「ああ…ッさ…佐助さッあぁッ!うあぁ…ッ!」
「あはッ!そんなに気持ちいいんだ?
俺様のモノ根元まで咥え込んで…淫乱だねぇ慶ちゃんは」

佐助の暗い眼が、欲情に溺れる慶次を映していた


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「……次…殿」

呼びかける優しい声音に意識が覚醒する

「…ゆ…き…?」

目を覚ました慶次を見て、幸村がホッと息を吐く
「お具合は?」
「え…、俺…」

上半身を起こすと額から濡れた手拭いが落ちた
幸村はそれを拾い上げ、側に置いてある水の入った手桶に浸す

「すみませぬ慶次殿、騎馬訓練が長引いてしまい遅そうなりました」
「う…うん…」

慶次は次第に先ほどの佐助との情交を思い出した
激しい交わりの途中から意識が途絶え、
気づくと目の前に想い人が心配そうな眼差しを向けている

幸村の顔をまともに見ることが出来ず、目を伏せた

「佐助から聞きましたぞ。某の帰りを炎天下待ち続けて下さったそうで…」
「え…」
「帰りを待ちわびて下さるお気持ち、真に嬉しゅうございます。
されど、このようにお倒れになられる程無理をされては…」

幸村は言葉を切り、心配そうに目を曇らせる

「うん…ごめんな。幸」
慶次はすぐに佐助の偽りを察し、話を合わせながらも罪悪感に唇を噛んだ
「ごめん幸…本当にごめん…」

幸村は慶次の辛そうな表情を自分の叱責のせいと勘違いし、
慌てて笑みを浮かべた
「某も慶次殿に早う会いとうございました」

そっと慶次の頬に手を伸ばし顔を寄せ
遠慮がちに唇を軽く重ね合わせる
「幸村…」
「慶次殿、何か某に申したい事がおありなのでは?」

幸村の問いにドキリと心臓が跳ねたが、
平静を装っていつも通りへらりと笑う
「なんだい幸、神妙な顔して」
「慶次殿は近頃お加減が優れぬ故、何か悩み事があるのかと…」
「なんでもないよ」
「されど…」

幸村の言葉を断ち切るように、今度は慶次の方から唇を重ねた

「…幸村、好きだ」
慶次の囁きに幸村は曇っていた表情をパッと明るくして頬を染める
「そっ!某も、慶次殿を好いておりまする!」
「本当かい?」
「無論にござる!さ、早う横になってお体を休めて下されっ!」

慶次は真っ赤になって慌てふためく幸村の様子に目を細め、
言われた通り布団に横たわる

「後で佐助に膳を運ばせましょう…それまで一眠りされよ」

言い残して、パタンと静かに障子が閉まった



幸村が去った後の静寂が慶次の心に重く圧し掛り

「幸村ぁ…」

嗚咽が漏れないよう、布団に顔を押し付けた