畑仕事をしていると横に白い影が見え驚いて身を引いた

「クゥ〜」

「…犬か…」

雑種っぽい白い犬が尻尾を激しく振っている

「アゥン!」
頭を撫でてやると嬉しそうにないた

「かっわいいな〜お前、野良か?」

「俺の犬だ」
頭上の声に顔を上げると政宗がいた
「政宗…お前仕事は」
「Ah〜まぁぼちぼちな」
「小十郎さんに叱られるぜ?」

今日は所用で小十郎が城に来ていない
それを分かっててサボっているのだろう
でなければ畑に来るわけがない

「お前は真面目だな
ニヤリと政宗が笑う

「小十郎さん怒ると怖いからな」
眉をひそめる俺を見て
「違いねぇ」と賛同すると、しゃがんで犬の頭を撫でた

「コイツは雪丸ってんだ」
「へぇ〜白いからか?首輪してないから野良かと思った」
「What?首輪?」
「飼い犬は首輪するんだ。ちゃんと所有者がいるよって証拠にもなるしな」
「hum…そりゃ面白れぇ」

試しにお座り!と言ってみたが犬のリアクションはなかった

「…ダメだな」
「何だ今のお座りってのは」
「?…何って座れって命令だけど…俺が主じゃねぇから言うこと聞かねぇな」
「…雪丸、座われ!」
政宗が指示しても犬は相変わらず


愛らしい顔で尻尾を全力で振っている
「オイオイ、言うこと聞かねぇぞ?」
「いや、っつーかお前が躾てねーんだろ」
「躾…」
「犬ってのは集団で行動する生き物だから主が決まってる方が安心するんだ…お前の言うこと聞かないってことは心ん中に決まった主人が他にいるんじゃねーか?」

笑いながら言ってやると政宗が不満そうに顔をしかめた

「Ah〜…コイツの世話小十郎がしてるからな…」
「ははっ!じゃ小十郎さんが飼い主だろ」

政宗が肩をすくめて犬を見下ろすのがおかしくて、本気で大笑いしてしまった

「そんなに笑うことねーだろ!…ところで人間の時はどうすんだ」

「ん?」

腹を抱えながら涙目で政宗を見る

「犬を所有すんなら首輪をつけるんだろ?相手が人間ならどうする?コイツは俺のモンだって主張すんのは何かあんのか?」
政宗の思考は突拍子もない
「人間には首輪はしねーなぁ…」
と、考えて思い当たった
「そうだ!指輪するぜ」
「what?」

右手にはめていたシルバーリングを見せた

「こーゆーのを交換して左手の薬指にはめておけば、もう決まった人がいるって証拠」
「hum…こりゃ銀か?高価なもんだな」


「そりゃそうだ、なんたって一生に一度。人生の伴侶に贈る品だからな」
「……そうか」

政宗が俺の手をとり指輪を見つめている

がコイツを右手にはめてるってことは、そーゆー相手がまだいねぇってことか?」
「ん…まぁ、悲しいかなそう言うこと」


犬を吠えられ思い出す

「あ、やべ。サボり過ぎた…政宗も仕事に戻れよ」
畑の雑草取りを今日中に終わらせなければ
明日は罰として倍に仕事が増やされるだろう…

「Alllight!じゃーな




傾いた橙色の光にようやく鎌を置く

今は秋で収穫の時期でもあるが、これから冬までの短い間に植えなければならない作物もある

正直に言って作物は貧相だ

農業の知識はないが
化学肥料や農薬がないせいで土地も痩せるし害虫被害もヒドい

冬の間は百姓はわずかな食料で食いつなぐ

そんな農民の生活を分かっているから小十郎さんは自ら畑を耕すんだろう

「…偉いよな」


まして政宗はそんな領民の生活や命を預かってる

その重圧は計り知れない

「俺…アイツの役に立てるかな」


今は何も出来ないけれど
いつか…



continue…